治療法の原点

私のような民間療法を生業としている者にとって誰しも施術法の基本的な原点があると思う。
施術法でも治療法でもどちらでも良いのだが、法規的には施術となる。
ただ言葉で発する場合に「せじゅつ」と「ちりょう」だと後者の方が発音がし易いので会話の際の一般語?として「治療」を用いる事が多い。したがってこの先は「治療」で統一しよう。

さて治療に対する考え方だが、これは困った事に「治療する人間の数だけその方法がある」と言っても過言では無い。これがこの業界の興味深い面であり、困った面でもある。
なぜ興味深いのかと言うと、それこそ星の数ほど治療に対する考え方や方法があるので、治療家側にとっては様々なメソッドを知る楽しみがある。
そして困る部分は、治療する人間によってその方法が違うので、一般の方は治療を受けたくてもそこの治療院や先生が「何をやってくれるのか分からない」所であろう。
それに治療家側としてもメソッドが多いのは何がベストなのかのセレクトに困る場合もある。

私がこの業界を目指し始めた当時はまだこういった治療院などの施設の数が少なく、かつ様々な治療法が表に出る事は少なかった。だから治療技術を身に付けるには「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の心境で師匠の元に弟子入りしなくてはならなかった。
つまり徒弟制度が成り立っていた。まだ昭和の流れを汲んでいた。
しかし時代は進み、厳しい昭和の徒弟制度は次第に少なくなってきた。そしてネットの発達が最も影響が大きかったのだとは思うが、次第に物事がオープンになり、得られる情報量は数千倍になった。

したがってわざわざ厳しい環境に身を置かなくても、技術や経営のスキルを学ぶ事が出来る世の中に変化していった。
一時話題になったが、専門学校を出てすぐに店を開き、ミシュランの星を獲得したお寿司屋さんや、YouTubeで学んで店を開いた寿司職人などその例だ。
治療業界もこれと似たような流れになったのである。
(但しこういった例は、聞くだけでは簡単にやっているように思うが、マネージンングやマーケット戦略などの分野で相当の勉強をしている。でないとこうは行かない。)

ここで一般の方の素朴な疑問が1つあると思う。それは、そういった事柄を「資格を取得した専門学校で学ばなかったのか?」である。

実はこれが治療業界の困ったパラドックスで、理想と現実の狭間で揺れる思いが交錯する。

大雑把に述べると、私が学んだ学校は国家資格を得る為の養成学校であるが、学校側の理想は3年間学費を納めて国家試験に合格してもらう事である。それが学校経営だ。
つまりそれがメインであるので、技術の取得に関しては二の次である。まあ基本的なモノを身に付けてもらえばよい。あとは卒業後に実際の現場で学んでくれ。というスタンスだ。

私は2つの科を出たが、鍼灸マッサージ科は技術的な内容は結構多くやった。
やはり鍼灸やマッサージは特殊な技法なので、最低限の治療が出来なければどうしよも無いからだろう。現場で一般患者さんに対しての実習もあった。更には卒業後の研修期間に早くも開業した仲間が複数いた。
しかし柔道整復科では殆どそんなことはやった記憶が無い。あるにはあったが、さわり程度だ。
つまり学校のカリキュラム通りに真面目に授業を受けて卒業しただけでは実際の現場で患者さんを治療出来ない。
ただし柔道整復科の生徒の多くは通学しながら接骨院などで修業をしていたので、各個人がその修行先での治療法を学んでいたからその必要性は低かったのだろう。学校側としても技術を教えるやりずらさがあったのかも知れない。でも全員がそのような環境には無いのでもっと生徒の将来を考えて欲しいと思っていた。
私の通った学校は国家試験の合格率は全国でも高かったが、その反面、現場での実力はあまり身に付かなかった。特に柔道整復科は。

逆に「整体院」や、いわゆる「激安マッサージ店」などはどうか?
こういった資格は民間資格で国家資格ではない。したがって学ぶ内容や期間は定められていない。
それぞれだ。期間は短ければ数週間だし、数か月や年単位の所もある。
それで実際の現場にデビューするのである。
しかし国家資格の養成校と違って、現場での実践的な手技を中心にカリキュラムを進めるので、よく言えば即戦力となる。ここは大きな違いだ。
但し学ぶ期間が短いので医学的な知識には乏しい。だから痛みや不調の原因を説明するのに「身体の歪みが原因です。」としか言えない治療家が多い。つまり医学的な説明があまり出来ない・・・。

これで実際の現場で働く2種類の治療家が出来上がった。国家資格は持っているが、治療が出来ない治療家と、即戦力ではあるが、医学的知識が乏しい治療家だ。
究極の選択ではないが、さて一般の方はどちらを選ぶのだろうか?

そんな選択肢しか無いのは困るのだが、現実にそのようなペーパードライバーのような治療家もいる。
しかし雇われているだけならまだしも、独立して何十年もやっていく事は不可能だろう。

だから学生の頃から、又は卒業した後に各自で勉強をしていかなければならない。
国家資格を持っている人が技術を学ぶために整体の養成学校に入る場合もあるし、整体師が国家資格の養成学校に入る場合もある。

先に述べたように、治療術は星の数ほどあるが、基本的な技法、流派?を身に付け、それで自信を持ってやっている治療家も居れば、良さそうな術は何でも取り入れようとする治療家も居るだろう。
実はようやくここから本題なのだが、私はどうなのかと言うと、後者に近い。

私の母校は東京にあったし、その後の研修先やバイト先、就職先も東京や神奈川だった。
そのくせ開業地は松阪市のこの場所を予定していた。
しかし活動地域が首都圏だったので、開業地である松阪市の状況が肌感覚的に分からなかった。
テナントを探すならその時々で条件の良い場所を探すという選択肢があるが、場所はあらかじめこの地に決まっている。
しかもその時点で同業者が密集しておらず、都会に比べたら地理的な条件は悪くなかった。(但しこの場所は一般的な店舗としての立地条件はかなり厳しいが・・・)
もちろん松阪市内の医療機関に就職し、何年か仕事をし、地域の方に顔を覚えてもらってから開業するという算段もあったが、それでは時間が掛かってしまうし、その間に近所に同業者がオープンしてしまう可能性もある。
未知数の部分が多い故に早めに開業し、場所を押さえておく必要があった。

つまり資格を取得し、卒業してから開業するまでの期間を早く予定していたので、時間を掛けて修行をする算段が初めから私には無かった。
しかし開業までが早かった分、それまでの期間は内容の濃い時間を過ごし、その日までに出来るだけのの知識や技術を身に付けた。「〇〇治療法」や「○○流派」というものをじっくりと身に付ける時間がなかった分、体験して手ごたえのあった様々な技法を取り入れて実際の現場で活用している。
YouTubeで学んだ寿司職人の話をしたが、私もそれと大差ないかも知れない。

そして開業後もそのスタイルは変わらない。悪く言えば寄せ集めだが、良く言えば、自分が納得した方法のみ活用する、良いとこ取りの治療法だ。よく著名な料理人が「自分が納得した食材しか使いません」みたいな事を言っているが、それと同じで、極当たり前の事だと思う。

さすがに独立して20年に差し掛かるが、もし治療技術が並み以下だったら、ここまでやってこれなかったであろう。当院の口コミを広めて下さった患者さん達には感謝しか無い。

そして現時点で、治療法をごっそり変えるような事はしないが、今後も症状改善の為に、新たに使えそうな技術があれば、ポイントポイントで導入して自分の手技をブラッシュアップしていこうと思う。

少しでも早く、つらい症状を改善出来る様に。

関連記事

  1. 病のリスク💧

  2. 10万円はどちらへ~?

  3. 9月15日

  4. 肉塊オムカツ(@_@)

  5. 腰痛の辛さは分かっている。

  6. 結城神社とWBCとおはぎと

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。